インファーネスひみつきち

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私の息子はアイスキャンディになって帰ってきた

 「戦時中でも愉快な気持ちを忘れてはいけません。英雄がアイスキャンディになって帰ってきます!!」こんな宣伝のポスターを街で見かけたその日から、電話の宣伝用コールが何度もうちに届きました。そして数日後そのアイスを販売している会社からアイスキャンディが届きました。氷もすぐ溶けてしまうような暑い夏なのでたった一本のアイスのために、とても丁寧に包装されていました。「すぐ食べないと溶けちゃいますよ」という配達員の気遣いにしたがって玄関でアイスを食べました。こんなに暑い日なのにアイスはたった今クーラーボックスから取り出したかのように冷たかったのです。赤いスイカのフレーバーでした。

 息子は軍に入隊して数ヶ月後、フランス解放軍としてノルマンディに行きました。といっても大規模な上陸作戦があらかた片付いてからの派遣だったので、私はどこか安心しており、また息子には不満の影が確かにありました。他の若い男性と同じように英雄になるチャンスが欲しかったのでしょう。そして本土で息子と別れてから二ヶ月後、軍の方が家に訪ねてきて息子の死を知りました。戦闘によるものではなく、不注意で戦車の履帯に巻き込まれてしまったそうです。

 アイスのパッケージイラストは宣伝ポスターのそれと同じで、パッケージを横断するように2本の履帯跡が描かれていました。照りつける日差し越しに、中で溶けて染み付いたアイスキャンディがちょうど履帯跡と重なって見えました。